説明

 ニューロサイエンス学位プログラムHP
 募集要項:博士前期過程
      博士後期課程

・神経経済学シンポジウム:リンク

自己紹介

自分の写真
動物やヒトを対象に神経経済学の研究を行っています。神経経済学には神経科学,経済学,心理学の知識を用います。興味のある方は、h-yamada_at_md.tsukuba.ac.jp へご連絡下さい。筑波大学です。博士前期・後期課程の研究指導担当教員となっています。twitter: @Hiroshi12337131

卒業生

卒業生:田尻涼(2014, 医療科学類)、今泉優理(2018, 医療科学類)久保木亮介(博士論文指導(神経科学)2022、現武田薬品工業)

2010/01/31

数学の脳科学における有効性

今日、ボスと議論した話題

人の意志決定について脳の情報処理を理解する上で、計算理論に基づく研究は有効だけど、研究は必ず規範となる理論(Normative theory)からスタートすべき。理由は、

1.観察した現象を説明する計算理論は沢山あり、2.そのサブクラスも含めれば無数に可能。3、そのモデルが正しいと証明することは現実的に可能でない。

従って、規範となっている計算理論から出発して、そのサブモデルを議論していくことが重要だという思想。逆にいえば、何か適当なモデルから出発して、その周辺でサブモデルを議論しても、局所最適解を探していることになる。最も悪いのは、自分がなんとなく好きなモデルに後付けで色々付加して(ad hoc)、こんなによく現象を説明できるようになりましたよっていう研究だ。

ここで、生物学的要因が果たす制約条件は、あくまでも補足的なものと考えるのが良いという考え。制約を増やすことでモデルは絞り込まれるが、モデルの全ての仮定を生物学的要因で証明することはかなり難しい。


強化学習のTDモデルの成功を例にあげれば、
TDはモンテカルロ法という優れた規範理論に極めて近い計算過程であり、生理学の研究によりドーパミン細胞の発火頻度がその性質を備えていることが多数の研究により示されている。

経済学を例に挙げれば、
モデルは必ず効用理論からスタートしている。期待効用理論もプロスペクト理論も効用理論がもとになっている。


脳は計算回路なので、工学の得意な計算手順(algorithm)を備え持つモデルが重要。ミクロ経済学では計算を回路、手順として考えることはない。逆に不必要な要素を増やしたアルゴリズムは、その現象に対する説明力は上がっても規範から大きく外れてジャンクになってしまう。


脳研究がもっと進んで脳の計算基盤が明らかになればモデルはずっと絞り込まれるが、現段階ではその手法は意志決定の研究には望みが低い。ならば、やはり、シンプルで良くその計算の重要性が理解されている計算原理から始めるべきなのだろうか。

【Book】Neuroeconomics第二章:実験経済学と神経経済学

この章の言いたいところは明確に理解できていない。理由は、実験経済学のことを私がほとんど知らないからだろう。

基本的な著者の立場は、脳活動の知見が実験経済学の理解にどう役立つのかを説明するもの。
それには、以下の3つの基準が重要とのこと
1.Internal Order:個人の選好と脳が選好を生み出す数理モデル
2.Social Order:個人間(他者との関わり)のもとでの意志決定
3.Market Order:集団

それぞれのレベルで意志決定に関わる脳内の計算過程がどう役立つのかを例を挙げて提言している。マーケットレベルになるとほんとにどう役立つんだろうな?

2010/01/24

【Book】Neuroeconomics第一章:Introduction

Neuroeconomics(ピンク本)を読んだまとめ

第一章:神経経済学はどのようにして生まれたか?
    認知神経科学と実験経済学・行動経済学の出会い
    神経経済学のこれから

研究の流れ
・神経科学:1990年代のPerceptual Decisionの研究を皮切りに、意志決定に関する研究が盛んとなる。脳の損傷患者の知見や破壊実験などにより、心理状態と脳機能の関係が議論された。2000年に入ると、特に研究数は格段に増えた
・経済学:公理を用いた規範理論は単純で強力であった。理論と実際の行動のズレをパラドクスとして問題化して修正される理論は、明快な理論と消費者の行動の鋭い予測を生み出す。

融合の動機
・神経科学:研究の規範となる普遍的理論がなかった。経済学はうってつけ。
・行動経済学:心理学の原理を取り込んでモデルを改変してきた流れから、更に神経生物学の知見を取り込むことで新たな予測モデルを生みす方向性へと向かった。

両者が歩み寄った契機
 非侵襲脳活動測定器(特にfMRI)が90年代に発達したことで、人間を対象に脳活動の測定が可能になった。


脳科学の知見が、ヒトの意志決定の予測の新たな規範理論となりうるのかはわからない。脳の計算アルゴリズムを神経生物学の知識に基づいて理解できた時、初めてそういえるのかもしれない。反対派は多いが新しい挑戦をしなければ何も生まれない。歴史に残る研究なんてほんのわずかだし、それが科学として正しい方向なのかどうかは何十年も経た後に明らかになることだと思う。まあ勃興期で玉石混淆なので、研究の質を見分ける目がなければならない。また、成熟した学問はいつも間違いが少なく心地よいのも確かだが。

2010/01/22

Decision Making under uncertainty

結果が不確実(Uncertainty)な状況の意志決定には、以下の2つの状況がある

1.Risk
2.Ambiguity


人間はRiskとAmbiguityのどちらも嫌うことが知られている。


Risk
行動選択の結果が確率的な状況。例えば、宝くじ、パチンコなどを思い浮かべてもらえるとよい。
最も重要な点:結果の確率分布は既知である。ただし、結果がでるまでその結果はわからない。
(宝くじの裏面を見ると発売何万本中、1等a本、2等b本、、、というように、全ての出現確率が記載されている。)

Ambiguity
選択行動の結果起こる事象の確率が不明な状況。Unknown probability
 Ellsberg paradoxはexpected utility theoryの公理を破る例として知られており、ambiguity aversionの証拠として良く取り上げられる。


----------------------------------------------------------------------
最近の論文ではこちら。Glimcher labから。リスクとアンビギュイティーのレベルを操作したクジを用意し、クジの価値と相関する脳活動を示す領域を調べると、線条体(Striatum)と内側前頭前野(Medial prefrontal cortex)がどちらのクジの価値も表現しているとのこと。

2010/01/11

拡大解釈の危うさ

科学、とくに人間を対象とした実験は、社会に与える影響が大きいことを十分認識しておく必要があります。特に神経科学では、測定機器の原理の理解が浅い、実験デザインの未熟さなどの理由で、学術論文上において結果の意義について拡大解釈がおこります。わかっていないことが多い発達段階の学問であることもその理由かもしれません。

 拡大解釈を通り越して俗説となるとさらに大変。例えば、人は脳の本来の能力の10%しか使っていないとか。神経科学学会から注意が喚起されたそうです(オリジナルはこちら)。そういえば、北斗神拳では30%だったなぁ。ケンシロウは残り70%を使えるらしい。
 日本のバラエティー番組とかで神経科学を扱ったものには、俗説が多いのは事実だと思います。科学成果の記事であっても、実験結果が拡大解釈されて記事になったりしてる時もあるし。科学者なら発信する科学情報の厳密さには、特段の注意が必要だなぁ。わからないことはわからないと言えることもまた重要。以前、そんなことを書いていた。。。まあ、他の研究者を惹きつける魅力的な仮説を提案する重要性は言うまでもなく、拡大解釈との境界を明確にしつつ、社会一般の人が興味を持てるかたちで情報を発信する能力は養わないとなぁ。

2010/01/09

ganzfeld experiment

今日、ラボの同僚と盛り上がった話。ガンフェルト実験!!(Psi)

1.被験者の目にピンポン球を付けて、ディスコにいる時のように多量の視覚・聴覚刺激を与える。

2.その間に他の部屋にいる人が念力で自分が見ている映像を隣の被験者に送る。念じる念じる。

3.操作の終了後、ガンフェルト状態になった被験者に複数の画像を同時に見せ、ガンフェルト状態になった時に見えたと感じる物を選ぶ。

すると、偶然よりも高い確率で、送信者が見た映像を選ぶそうな~~~~まじ?

被験者はこんなかんじ。詳しい説明はこちら
Locations of visitors to this page