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 募集要項:博士前期過程
      博士後期課程

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動物やヒトを対象に神経経済学の研究を行っています。神経経済学には神経科学,経済学,心理学の知識を用います。興味のある方は、h-yamada_at_md.tsukuba.ac.jp へご連絡下さい。筑波大学です。博士前期・後期課程の研究指導担当教員となっています。twitter: @Hiroshi12337131

卒業生

卒業生:田尻涼(2014, 医療科学類)、今泉優理(2018, 医療科学類)久保木亮介(博士論文指導(神経科学)2022、現武田薬品工業)

2021/10/09

研究者として生き残るためにすること(神経科学の助教のまとめ)

 自身の経験から「研究者になりたい学生がやるべきこと」をまとめてみた

1.大学院生

博士後期課程に進むなら、上手く行かなければすっぱりと諦める程度の覚悟を決めて進学することが必要です。しっかりと研究成果を出すために、働くのと同じで決まった時間で生活を組み立てる。60h/week程度の時間を研究に費やす。私は、だいたい10h/day✕6でした。ここで、自身が研究者として食っていけるのかを、自身で判断することが重要です。自分は食っていけると思ってアカデミックに残ったけど、自分が思ったほど成果を挙げられていないです。

最低目標:博士の間に1本、自身で全て説明できる論文を作成する

中間目標:メインの仕事を1本、サブの仕事を1本論文にする

高い目標:Cell, Nature, Science, Nat Neuro, Neruonなどの高インパクトジャーナルに論文を投稿し、運が良ければゲットする(私は外れました。1回査読には回ったけど)

なお、博士の間に、分野の必読書を英語+日本語で読み、基礎知識をつける。論文はアブストのみ読んだ物も含めて、300報程度を読む(分野により異なると思いますが、自身の論文作成に関わる必読論文+興味を持った関連分野でそれくらいでした)。自分の研究に関わる論文は全て網羅する。Fellowには必ず応募する(例:学振)。米国ならGrant writingのコースがあって、学生の時からお金を取る技術を学びます。

研究以外にも友達や家族など、繋がりを持ちましょう。趣味も大切です。デスクワークが増えると体調を崩しやすいので、定期的に運動をしましょう。研究が上手く行って楽しい時は問題ないですが、上手く行かない時こそ自身の力が試されます。その時に、人と繋がっていることは凄く重要です。

また、必ず休みを取りましょう。規則正しい生活を繰り返すことが、心身の健康に大切です。大学院生は社会に出たことが無いため、労働の厳しさに負けやすくなります。アスリートが行うような、メンタルトレーニングを行うことが重要と自身は思います。研究=知の挌闘技と捉えるくらいが丁度良いかと思います。

最後に博士論文を書く時など、全てにおいてですが「シングルタスク」をすることを勧めます。一つ一つの作業・業務がアヤフヤなのに、あれやこれやとやると、前に進みません。マルチタスクは効率が落ちるので、シングルタスクの精度が上がってからやりましょう。悪い言い方をすると、マルチタスクが逃げ道を用意することになり、一つのことをやり遂げられなくなります。

補足:私は競争が嫌いな人間なのですが、研究者になりたいなら競争する以外道はありません。プロ野球選手と同じです。プロの研究者になるために、競争に勝つための技術・戦い方を身につけるのが重要です。


2.ポスドク

日本をでて、世界的に見て「科学の中心地」でポスドクを行う。中心には人と金と情報が集まる。できる限り、ビッグラボに行く。また、若手で無期雇用を得る前後のPIは生産性が高くお勧め。大御所で生産性が落ちたPIのとこは行かない方が良い。自身が行ったラボは、PI50歳の確立した大御所でしたが、非常に生産性高く科学を営むPIで、サバティカルを取って本を1冊書いてました。その間に、大西洋をヨットで横断したりとか。1に生産、2に生産、全てまず論文生産(自身のホームラン狙いが外れ空振りし続けた経験からそう思う。とにかく高IF雑誌を振りまくる。最近はIF10以上の論文沢山ありますからね)。これに加えて、最先端の情報が集まる中心地で将来のネタを考えるのも大切です。IF産業は流行りに乗れる力が必要なので、流行りを作り出している世界の中心を感じるのが重要だと思います。ある意味、ファッションの流行りと同じと考えるのが良いです(ファッションの流行りは業界が決めている。今年の流行の色と形はこれよ!的なw)

海外の行き先を決めるには、1.科学、2.文化、3.食事、を考慮することが重要です。日本の科学水準、今はまだ高いですが。。。日本ほど便利な国はないので、大概の物は日本にあります。何をしてもほとんど間違いがなく、電話一本でスグ対応してくれるサービスを社会全体が提供している国は、どこにもないです。海外に住むと、凄く色んな違いがあって苦労しますが、色々な価値基準が身につくため、人間としての生きる力が付きます。”苦労は買ってでもしろ”的なものかもしれません。日本に居ても、海外の研究者との人脈はできないので、ビッグラボに行き、優秀な若手研究者と切磋琢磨し、人脈を築くのが大切と思います。

 日本で研究を続ける場合には、できるだけ早くポスドクを脱し、大学の機関職員として無期雇用を助教で得る。特任○○は時限付きのお金の雇用なので、ある意味ポスドクと変わらず、お金が切れた瞬間に職位を失うこともある(例えば、特任准教授だったけど、ポスト見つからずポスドクに戻るとか)。ポスドクは3年1サイクルを基本とし、2ndポスドク程度までが目安。3年いるとラボの技術をだいたい吸収できるので、それ以上の滞在は逆に学習効率が落ちる。

最低目標:1年一報の論文を生産する。仕込みの時間を入れると、これは結構シビアな目標だけど、とにかく生き残るためには生産。

中間目標:年一報&IF10以上の雑誌を1報はだす。主に姉妹誌。

高い目標:Cell, Nature, Science, Nat Neuro, Neruonなどの高インパクトジャーナルに論文を複数回投稿し、できるだけ多くの成果を得る。多ければ多いほどよいPI職が得られる。(私は全て外れで、負けた数なら多分人に負けないと思う。嬉しくないけど、鈍感力が付きます。元は繊細で内気な人柄なんですよー)

Grant書き、Fellow書きは常に行う。米国だったらK99/R00などお勧め(私は落ちました)。民間の助成金も書く。

最後に、ポスドクの給料は自分のボスが出してくれています。従って、仕事の優先順位は、常に今のボスになります。ボスもラボに現在在籍しているメンバーの優先順位を最も高くしてくれていることが多いです。従って、昔の仕事を出版させる必要がある場合には、家でやる、空き時間にこそっとやる、など、追加の努力が必要になります。この際、少しずつマルチタスクに慣れていくことが、重要かなと思います。

補足:海外で色々経験することで色んな事が見えるようになり、良いことも悪いことも経験して、人生が豊かになると思います。海外ポスドクの給料は安いので、これじゃ家族で食っていけない!と思って、必死に就活を始めました。自身の場合。


3.ポスドク終盤

上記の段階で溜まった成果に応じて、PIポジションを探す。世界で探すのが良い。就職はとにかくニーズマッチ。相手のニーズに自分がマッチしていると思われる所に出す。

ベスト:研究の中心となる機関(日本なら、旧帝大、理研、その他諸々)でPI職をげっと

ベター:大学の機関職員としてテニュアトラックポジション(任期無しならなお良い)を得る(主に助教)

まだまだ:海外から日本に帰る場合などは、ポスドクで帰る事もある。その場合は2を続ける。ちなみに、私は修士課程からポスドクの途中まで、10年間で論文が2本しか生産できず、かなり苦しみました。その理由は、振ったけど当たらなかったを繰り返したためです。そこで、戦略を切り替え、とにかく書ける論文は何でも書くという戦略に変更しました。もちろん1本を仕上げる大変さは、どの論文でも変わらないので大変ですが、「論文を生産できなければ科学者ではない」のは、世界共通だと思うので、「とにかく書く」が大切です。

補足:現在は、日本に常勤職が非常に少ないため、ポスドクで日本に戻ることも多い。一生ポスドクを続ける可能性も考慮に入れた上で、自身のキャリアについて考え、必死に就職活動をすることになります。私の場合、知人の研究者に聞きまくって、たまたま期限付きのポストを公募で得ることができました。同業者の信頼を得ることは非常に重要です。PIがラボを立ち上げる際に助教が付く場合もあるので、その際に、信頼できる力を持った人に来てもらい、ラボをしっかりと立ち上げたいという目線で人を評価します。医学などにまだ残っている講座制の助教ならテニュアトラックの事が多いですね(特任○○じゃなく機関職員)。理学部系は、助教からPI職になってきてますね。Co-PIみたいなとこもある。


4.PI職を得るために

自身まだゲットできていない。とにかく3種の神器(原著論文、Grant取得リスト、押して頂ける推薦者)を揃える。なるべく早く助教でも無期雇用の職につくと、戦略の幅が広がる。長い目でみた研究の組み立てができるので、1~2年で成果がでる以外の研究をやりやすくなる。勝ち組に入れば(雲の上の存在の人たち。若くして当てた人たち)更に勝てるようになるのが、現在の日本のお金の配り方。これは、世界的に同じ傾向にある。皆、若くて優秀な人が好き。生物は若いほど価値が高く見えますからね・・・・(*)

今、就職戦線を抜け出せるように、自分の殻を破って、とにかく生産しています。IF高い雑誌を次々振るために、どんどん弾を込めましょう!


5.就職戦線でやること(←今ここ)

まず、自身の売れる対象となる学部、学科を絞り、そのそれぞれに応じてアピールできる申請書を作成する。私の場合、1.医学部の生理学、2.理学部の生物学科、に絞りました。他は出していません。中国も一時期考えましたが、今はまだだしていません。

現在、医学部では3回目の面接に呼ばれた所。私立大学、地方国立大学、研究大学、トップ10大学、で求められる内容は違いますが、とにかく、1.研究実績、2.教育実績、3.資金獲得実績、4.押しの貰える先生、を揃えます。今、業績インフレとともに採用者の年齢が上がっているように思います。40~45くらいの働き時の研究者が買われる感じと思います。私今45歳・・

ひぇ・・

申請はJrec-IN見てとにかく投げまくるわけですが、面接に呼ばれるようになると、続けて呼ばれる感じがあります。私はこの半年の間で3回面接に行きました。全て医学です。だいたい、教室の准教授の先生+2~4人、くらいの戦いになるようです。まだ、ポジションを得ていないので、成功に裏付けられるノウハウはありませんが、必要なことは「ニーズを知ること」です。大学毎に抱えている問題は違うので、その大学大学でニーズをちゃんと把握できると、一番自分の良い売り方が決まると思います。

私の場合は、授業実績(そこそこある)+論文実績(数はある。IFはそこそこ)+Grant(助教だった割に良くとってる)の中で、研究業績を押し気味にできる場合はそうしてます。なお、面接の受け答えで、自分自身がどのような人間なのかわかるように、統一感のある返答をするように心がけています。私の場合、ごまかすのが苦手な性格だったり、都合のいいこと言うのが嫌いなので、思ったことを自分の不利になっても言うようにしてます。

 ちなみに2022/9に准教授に上がりました。ずっとうちの医学は准教授人事がほぼ止まってる状況だったんですが、動き出した事で公募を経て昇進することができました。内部のお世話になっている先生方に感謝です。ちなみに、准教授であることも医学戦では大切なポイントと思います。准教授の看板により、内部でちゃんとやってたのね、っていう一定の評価が分かりやすく見えるようになるからです。内部の先生方も、ラボ持ちたいという気持ちを汲んで下さる先生方がいらっしゃいますし、人と人の繋がりで社会はできていますし。一人では研究も何もできないですから。

あとは、ひたすら打席に立つことですよね!今頑張ってます。


6.PI職を得てやること

まずは、PIになってすぐパフォーマンスが落ちてしまうことのないように、開始から3年程度で論文を投稿。足場を築きつつ、大物を作れる準備をする。学生さんは、個人の能力とモチベに合わせて、1に述べた目標設定を一つづつ作る。研究する前に、まず人としてちゃんとするのが重要なので、社会に出ていける程度の振る舞い、自主判断力、ナドナド、足りなければ教える。もちろん、辛いと続かないので、うまく行ってもいかなくても納得した時間を過ごせるように、環境を準備してあげないとな、っと思います。

自分がこれまで恩師にしてきて貰ったことですね(学部の研究室の先生、大学院の助教の先生、大学院の講師の先生、大学院の先輩、NYのポスドク先のPI、NYのポスドク先のラボマネージャー、NYのポスドク先の同僚、NCNPの同僚、筑波の同僚、秘書さんにゃどにゃど)。人に助けてもらったことに、素直に感謝できるのが大切です。

蛇足:良い研究を楽しくしたければ、良い研究環境を得る必要がある。そのためには、ポジション獲得競争に勝てる実績(論文の生産、同業者からの信頼(日本のコネではない)=ビッグラボに行く)を揃える。

 私のキャリアを見ていただくと分かるが、ほぼこの全てに成功していない。他人より抜きん出る何かが無いので、44歳でもPIポジションを取れていない(現在45歳になりました。2022/9)。しかし、上記の努力を続けることで、業界で生き残る程度の業績は出し、自身のアイディアで研究を続け、楽しく(ラボの看板持ってないけど)研究を続けている。一生助教の可能性も大いにあるけど(運良く昇進しました)、まあ、その時はその時で、自身の研究を楽しみ続けるのかなと思う。まあ、そういう人生ということだと思う。そりゃラボの看板なければ自身の研究と100%とは言えないので、運営の責任を持てることを含めてPIにならんとだめですよね。

 2021年10月現在、諸事情により、助教になった後の8年間で大学院生が一人もついていないため(最近までずっと実験スペース足りない問題があったので)、学生さんの育成と後進の指導に飢えている。人を育てるのは楽しいし、自分の成長にも繋がる。そんな助教でも良ければ、是非是非一緒に研究したい。博士後期の研究指導担当はちゃんとありますので、きっちり世界を目指して教育は行います。

 なお、2022年から、学部3年と4年と一人づつ指導して一緒に研究できることになりました。秘書さんも含めて4人のスモールチームですが、ポスドクの方一人来てくれたら一番いい体制だなって思います。

 私の研究予算は平均500万/年をこの10年ほど続けているので、自身の研究に困ることは無いけれども、もうちょっとお金取らないと、日本ではラボ持つ競争に勝てない現状があります。2022年から年1~2k万が5年のお金を頂けることになり、ポスドクさんを探す事になりました。良い人と巡り会えるといいなぁと思いながら、現在、募集中です。

補足:現在、50~60歳の研究者が大学の2/3程度を締めており、非常にポジションが少ない状況が日本で続いています。私の年代40前後は、大学院重点化の世代のためアカデミックで働く研究者人口が非常に多いです。しかし、あと、10年ほどすれば定年退職によりこの状況は改善されると思うので、今から大学院に入って研究者を目指す人には、状況が改善されると思います。昔に比べて、大学院生向けの各種の助成金も豊富です。研究者を目指すのも多分悪くはないと思います。文科省はむしろ、もっと若い人(39歳以下)を増やしなさい!っていってるので(*つまり自身は…ひぃ…以下略)

*少し冗談も入っています。また、研究者の捉え方は、私個人の経験に基づきますので、人により、立場により、見える世界は違うと思います。あくまでも個人の体験記ですが、これから研究者のプロを目指す人の参考になれば。楽しく研究できるといいですよね。恩送りは大切ですね。

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