タイトル通り、研究費の繰り越しが実質的に可能となりました。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101221-OYT1T00172.htm
これまでも制度上は可能でしたが、手続きがもの凄く煩雑だったり、繰り越し理由が認められないと没収されたりと、実質不可能でした。これはもの凄い進歩です。
1.年末の予算消化のムダが全く無くなる
2.今まで、7月~1月くらいの間しか予算を使えなかったが、通年して使えるようになる。
その他いろいろ良い点はありますが、この2点が達成されただけでも、十分研究を行いやすくなったと思います。本当に良かったです。
~ヒトの心の理解を目指して~
神経経済学 (Neuroeconomics)は、神経科学とミクロ経済学を融合した最先端の学際的な研究です。
・喉が乾いた時に飲む水は美味しいのなぜ?
・なんでペプシよりコーラが好きなの?
・ギャンブルってどきどきしますよね?
学生さんと一緒に、価値観が脳から生まれる仕組みを調べています。ヒトの人間性の理解・社会の制度設計の改善などに繋がります。ポスドクの方募集中です。まずは問い合わせください(2023/2/12)
説明
自己紹介
- 山田洋
- 動物やヒトを対象に神経経済学の研究を行っています。神経経済学には神経科学,経済学,心理学の知識を用います。興味のある方は、h-yamada_at_md.tsukuba.ac.jp へご連絡下さい。筑波大学です。博士前期・後期課程の研究指導担当教員となっています。twitter: @Hiroshi12337131
卒業生
卒業生:田尻涼(2014, 医療科学類)、今泉優理(2018, 医療科学類)久保木亮介(博士論文指導(神経科学)2022、現武田薬品工業)
2010/12/22
2010/12/19
研究者のキャリア形成
最近就職活動をしている。独立職、もしくは、半独立職を得ようとがんばっている。研究者のキャリアには、常にリスクはつきものだと思が、今自分が置かれた状況(young researcher)でポストを得るためには?とちょっと考えてみた。(もちろん、ビジネスほどリスクは高くないけど。。)ちなみに、NatureやScienceを当てた人にはあまり関係ない話だと思うけれども。
重要だと思われるポイントを羅列すると、
・論文は1番目に数、2番目に質
リスクを減らすという観点から、数を確保しつつ大振りを続けるのがベスト。研究者が溢れて競争が激しい今の状況では、人事審査において足きりがあるのが普通。まず、審査の候補に入るために一定量以上のコンスタントな業績が必要。そして、研究者にとって当然だけれども、長く歴史に残れるような素晴らしい仕事をすること。もちろん、数も無くて質も無ければキャリア終了だし。
・夢
研究者は人に将来性を買ってもらうのが仕事なので、売れる夢を描けること。
・金
経営のために必須
・ネットワーキング(コネ)
どこの社会でも知らない人は雇わない。日本では知っている人を優先する文化が強いのでなおさら重要。露出を高めて、幅広い研究者に自分の存在を認知してもらうのが重要。
・出口戦略
今の日本の状況では、”役に立つ”研究が必須。自分の研究がどう役に立つのか、嘘にならない範囲で説得できること
・就職先のニーズ
人事決定の過程や候補者の評価基準は、機関によってだいぶん違う。できる限り、情報を仕入れて機関ごとのローカルな候補者選定基準を理解しよう。
こんなところだろうか。。。。数の目処は立ったので、一発チャレンジできるネタ作りが、今再度必要なところ。過去に2つのネタでチャレンジしたけど、空振りを続けたし、次は当てたい。
重要だと思われるポイントを羅列すると、
・論文は1番目に数、2番目に質
リスクを減らすという観点から、数を確保しつつ大振りを続けるのがベスト。研究者が溢れて競争が激しい今の状況では、人事審査において足きりがあるのが普通。まず、審査の候補に入るために一定量以上のコンスタントな業績が必要。そして、研究者にとって当然だけれども、長く歴史に残れるような素晴らしい仕事をすること。もちろん、数も無くて質も無ければキャリア終了だし。
・夢
研究者は人に将来性を買ってもらうのが仕事なので、売れる夢を描けること。
・金
経営のために必須
・ネットワーキング(コネ)
どこの社会でも知らない人は雇わない。日本では知っている人を優先する文化が強いのでなおさら重要。露出を高めて、幅広い研究者に自分の存在を認知してもらうのが重要。
・出口戦略
今の日本の状況では、”役に立つ”研究が必須。自分の研究がどう役に立つのか、嘘にならない範囲で説得できること
・就職先のニーズ
人事決定の過程や候補者の評価基準は、機関によってだいぶん違う。できる限り、情報を仕入れて機関ごとのローカルな候補者選定基準を理解しよう。
こんなところだろうか。。。。数の目処は立ったので、一発チャレンジできるネタ作りが、今再度必要なところ。過去に2つのネタでチャレンジしたけど、空振りを続けたし、次は当てたい。
2010/10/21
勉強するならFoundations of Neuroeconomic Analysis
Foundations of Neuroeconomic Analysisが出版されました。Neuroeconomicsについて勉強するにはとても良い本です。一読の価値ありです。ちなみに、タイトルはサミュエルソンの"Foundations of economic Analysis"にあやかっているとのこと。
ちなみに、この本を書いている正にその時labに在籍していて、原稿を読んで、あーでもないこうでもないと、ディスカッションしておりました。夏休みで一冊本をかけちゃうんだから、やっぱり生産力が違うんでしょうねぇ。
2010/10/16
発表
今日は学会で発表したけど大成功で終了。データがシンプルで説明しやすいというのもあるけど、英語の発表練習をひたすら繰り返し、20回以上はやったのが良かった。Michel PlattやAntonio Rangelとも色々意見を交換して、有意義な発表だった。Antonioがロジックのできは最高だと言ったので、それは率直にうれしかった。研究室の同僚もみな褒めてくれて、本当に【トークは準備】と思った次第。
重要なことは、
1.ロジックを徹底的に作り込む。
2.理解を助けるための工夫をこらす。
3.ひたすら口に出して練習。
3はとにかくモーターラーニング。口を動かす練習とそれから、動作と話す内容を結びつける。
質疑応答では、エコノミストに対する答え方が難しかった。
1.Assumptionの妥当性に関しては、何の仮定が間違っているのか仮説を直接述べる必要性が高い。データ自身を示すことはそれほど重要ではない
2.データは強いので、なるべくデータで説明することが神経科学者には重要。
そんなところだろうか。
あとは、どこに論文を送るかってところか。
重要なことは、
1.ロジックを徹底的に作り込む。
2.理解を助けるための工夫をこらす。
3.ひたすら口に出して練習。
3はとにかくモーターラーニング。口を動かす練習とそれから、動作と話す内容を結びつける。
質疑応答では、エコノミストに対する答え方が難しかった。
1.Assumptionの妥当性に関しては、何の仮定が間違っているのか仮説を直接述べる必要性が高い。データ自身を示すことはそれほど重要ではない
2.データは強いので、なるべくデータで説明することが神経科学者には重要。
そんなところだろうか。
あとは、どこに論文を送るかってところか。
2010/09/21
さまよっている
最近、研究をしていてあまり面白くない。なんだろう?
結果はボチボチ出ていて、論文もそれなりに準備を進めている。それは、業績が無いと食っていけないから当然なんだけど、自分の今やっている研究が、自分のものではないような気がして(実際に、半分はボスのアイディア)、結果が出てきてもあんまりわくわく感が無い。
業績を作ることに必死になっているので研究を楽しむ余裕がないってのもある。あと、将来やろうと思う研究が平凡で、これわかったらすごいなぁ~って思える内容を思いつかないってのも理由の一つだろうか。。。。まあ、その前にポジションをゲットできるのか?って話もあるけど。自分はいったい、脳の何を知りたいんだろうな。研究する手法ってのはいろいろと身につけているし、それを用いて行っていることもそれなりに面白いんだけど、ワクワク感が無い。。。自分の得意な領域を伸ばし切れていないってのも原因かな。。。
自分が面白いと感じなければ、人が面白いと思うことはまずないから、この状況はまずいなぁ~と思うんだけど。気長に付き合うのがいいんだろうか。そんな悠長なことを言っていてはダメか。
結果はボチボチ出ていて、論文もそれなりに準備を進めている。それは、業績が無いと食っていけないから当然なんだけど、自分の今やっている研究が、自分のものではないような気がして(実際に、半分はボスのアイディア)、結果が出てきてもあんまりわくわく感が無い。
業績を作ることに必死になっているので研究を楽しむ余裕がないってのもある。あと、将来やろうと思う研究が平凡で、これわかったらすごいなぁ~って思える内容を思いつかないってのも理由の一つだろうか。。。。まあ、その前にポジションをゲットできるのか?って話もあるけど。自分はいったい、脳の何を知りたいんだろうな。研究する手法ってのはいろいろと身につけているし、それを用いて行っていることもそれなりに面白いんだけど、ワクワク感が無い。。。自分の得意な領域を伸ばし切れていないってのも原因かな。。。
自分が面白いと感じなければ、人が面白いと思うことはまずないから、この状況はまずいなぁ~と思うんだけど。気長に付き合うのがいいんだろうか。そんな悠長なことを言っていてはダメか。
2010/08/29
2010/08/09
2010/07/31
2010/07/20
Expected Utility theory, Prospect theory
Expected value theory
EV = P*X P:確率、X:お金
Expected utility theory
EU = P*U(x) P:確率、U(X):単調増加関数
*U(X)は効用。それに確率Pを掛けているので、”期待”効用
Prospect theory
V(p,x) = ω(p)*V(x)
ω(p):主観確率
V(x):Reference dependent value
*V(x)には利得のみならず損失も含まれる
EV = P*X P:確率、X:お金
Expected utility theory
EU = P*U(x) P:確率、U(X):単調増加関数
*U(X)は効用。それに確率Pを掛けているので、”期待”効用
Prospect theory
V(p,x) = ω(p)*V(x)
ω(p):主観確率
V(x):Reference dependent value
*V(x)には利得のみならず損失も含まれる
2010/06/05
メモ:行動経済学と実験経済学の違い
行動経済学
主に、心理学を主体的に経済学に取り込んで、いかに人間が”不合理”であるか?を理論と比較して説明を試みてきた学派
実験経済学
理論経済出身者が、理論の正しさとその適応度合いを知るために実験を行ってきた
ということで、行動経済学者は実験が得意で、理論の外で行動に影響を与える要因を探すことに重点を置いている。一方、実験経済学者は実験デザインが理論系の人にありがちな難しいデザインになっており、理論と測定が何故ずれるのか?に重点が置かれているように思う。。。(本当か?)
主に、心理学を主体的に経済学に取り込んで、いかに人間が”不合理”であるか?を理論と比較して説明を試みてきた学派
実験経済学
理論経済出身者が、理論の正しさとその適応度合いを知るために実験を行ってきた
ということで、行動経済学者は実験が得意で、理論の外で行動に影響を与える要因を探すことに重点を置いている。一方、実験経済学者は実験デザインが理論系の人にありがちな難しいデザインになっており、理論と測定が何故ずれるのか?に重点が置かれているように思う。。。(本当か?)
2010/06/04
Future discounting and Utility
人間は将来得られるお金の価値を割り引いて計算する。
例えば、
・”すぐもらえる20ドル”と
・”一ヶ月後にもらえる30ドル”
ならどちらを選ぶ?
すぐもらえる20ドル!!!(自分は)
ということで、将来得られるお金の価値は目減りする。
この目減りの仕方は、Exponential function(指数関数)と比べてHyperbolic function:双曲線でよく説明される。
ところが、この将来割引の測定において限界効用逓減の法則は無視されており、liner functionであると仮定されている。(多くの人間では、お金の主観的な価値は金額が高くなるほど、目減りする:risk aversion)。
ということで、真に当てはめるべきモデルは、時間割引とリスク依存性を両方伴ったモデルである必要がある。時間割引は奥が深く難しい。。。
例えば、
・”すぐもらえる20ドル”と
・”一ヶ月後にもらえる30ドル”
ならどちらを選ぶ?
すぐもらえる20ドル!!!(自分は)
ということで、将来得られるお金の価値は目減りする。
この目減りの仕方は、Exponential function(指数関数)と比べてHyperbolic function:双曲線でよく説明される。
ところが、この将来割引の測定において限界効用逓減の法則は無視されており、liner functionであると仮定されている。(多くの人間では、お金の主観的な価値は金額が高くなるほど、目減りする:risk aversion)。
ということで、真に当てはめるべきモデルは、時間割引とリスク依存性を両方伴ったモデルである必要がある。時間割引は奥が深く難しい。。。
2010/05/14
2010/05/02
【Book】 Neuroeconomics第四章:Formal Models of Decision Making and Cognitive Neuroscience
実験経済学における意志決定理論とは?その大部分は、von Neummann Morgensternの効用理論(効用の最大化)に含まれている。公理によって導かれる意志決定理論は、以下の条件下で実験データが取得される。被験者は、1.有限の選択肢から、2.二者択一で、3.繰り返し一つを選択する。これで、効用関数が求まる。
クジを使った期待効用理論では、クジは次のベクトル(x,p,y,1-p:2種類の金額とその出現確率)で表される。クジはお金でなくても、食べ物や飲み物などなんでも良い。公理は以前に述べたが、完全性、推移律、連続性、独立性の四つが満たされていれば、意志決定者は効用を最大化する。
次のポイントは stochastic choice
確率的な選択は、”ランダム効用理論(rondom utility model)”か”確率的な選択モデル (stochastic choice model)”で取り扱われる。
・ランダム効用理論:Ui = Vi + εi (効用関数にノイズが加わっている)
・確率的選択モデル:選択の関数にノイズが加わっている(強化学習の価値関数とソフトマックスみたいな感じ)。効用関数にノイズは無い。
財の選択を確率的に取り扱うようになったことで、”選好の強度”という概念が登場。簡単に言えば、選好の程度の違いが選択の頻度として現れることを指す。
以下は、知覚と意志決定の関わりについて
ランダムウォークモデル:意志決定の過程をモデル化
シグナルの精度と意志決定、意志決定に要する時間の関わり.....
加速度的に話が展開して終了。ついていけない。また、いつか読みなおすか...
クジを使った期待効用理論では、クジは次のベクトル(x,p,y,1-p:2種類の金額とその出現確率)で表される。クジはお金でなくても、食べ物や飲み物などなんでも良い。公理は以前に述べたが、完全性、推移律、連続性、独立性の四つが満たされていれば、意志決定者は効用を最大化する。
次のポイントは stochastic choice
確率的な選択は、”ランダム効用理論(rondom utility model)”か”確率的な選択モデル (stochastic choice model)”で取り扱われる。
・ランダム効用理論:Ui = Vi + εi (効用関数にノイズが加わっている)
・確率的選択モデル:選択の関数にノイズが加わっている(強化学習の価値関数とソフトマックスみたいな感じ)。効用関数にノイズは無い。
財の選択を確率的に取り扱うようになったことで、”選好の強度”という概念が登場。簡単に言えば、選好の程度の違いが選択の頻度として現れることを指す。
以下は、知覚と意志決定の関わりについて
ランダムウォークモデル:意志決定の過程をモデル化
シグナルの精度と意志決定、意志決定に要する時間の関わり.....
加速度的に話が展開して終了。ついていけない。また、いつか読みなおすか...
2010/04/03
【Book】Neuroeconomics第三章:Axiomatic Neuroeconomics
公理(Axiom)がどの様に神経科学に役立つか?
ミクロ経済学では、意志決定理論のモデル形成に公理を用いたアプローチが中心的な役割を果たしてきた。公理は、モデルが実験データによって証明されるのに必要・十分な条件を与える。
第一の例としては、効用の最大化(Samuelson, 1938)問題がある。この問題を証明するのに必要な唯一の公理(仮定)は、顕示選好の弱公理である。
公理によるモデル改善は、最もシンプルで原理的なモデルから始まり、一つずつ改善していく。従って、モデルは樹状に枝分かれしたもの(nested)になる。
次の大きなモデル改善は、フォンノイマン・モルゲンシュルテン(1944)によって提唱された”宝くじ”を対象とした、期待効用理論が挙げられる。ここでは独立性(independent axiom)の公理が追加された。
この独立性の公理の破れを説明したのがカーネマン・トヴェルスキー(1973)で、Probability weighting(確率加重)と呼ばれる、主観的な確率が絶対的な確率からずれることを説明したモデルである。
その後、Ambiguity aversion、disappointment aversionなど、様々なかたちでもとのモデルが更新されている。実験により公理の破れを見つけ効用理論を改善してきた歴史が、公理の果たす役割の重要性を示している。
この章で著者らは、”公理”を脳活動に適用することで、報酬予測誤差信号を規定するのに必要最低限のルールを導き出そうとしてる。その公理とは、
・・・・本を参照してください。Fig.3の見た目の通りです。
Axiomatic approach を用いる利点は、この条件に当てはまる任意の関数なら何でも良く、いちいち細かなモデルの違いを検討しなくても良いことだ。そして、公理に反する例を見つけることで、モデルを絞りこむことが可能である。公理を用いた研究は、行動経済学の大きな特徴の一つである。
ミクロ経済学では、意志決定理論のモデル形成に公理を用いたアプローチが中心的な役割を果たしてきた。公理は、モデルが実験データによって証明されるのに必要・十分な条件を与える。
第一の例としては、効用の最大化(Samuelson, 1938)問題がある。この問題を証明するのに必要な唯一の公理(仮定)は、顕示選好の弱公理である。
公理によるモデル改善は、最もシンプルで原理的なモデルから始まり、一つずつ改善していく。従って、モデルは樹状に枝分かれしたもの(nested)になる。
次の大きなモデル改善は、フォンノイマン・モルゲンシュルテン(1944)によって提唱された”宝くじ”を対象とした、期待効用理論が挙げられる。ここでは独立性(independent axiom)の公理が追加された。
この独立性の公理の破れを説明したのがカーネマン・トヴェルスキー(1973)で、Probability weighting(確率加重)と呼ばれる、主観的な確率が絶対的な確率からずれることを説明したモデルである。
その後、Ambiguity aversion、disappointment aversionなど、様々なかたちでもとのモデルが更新されている。実験により公理の破れを見つけ効用理論を改善してきた歴史が、公理の果たす役割の重要性を示している。
この章で著者らは、”公理”を脳活動に適用することで、報酬予測誤差信号を規定するのに必要最低限のルールを導き出そうとしてる。その公理とは、
・・・・本を参照してください。Fig.3の見た目の通りです。
Axiomatic approach を用いる利点は、この条件に当てはまる任意の関数なら何でも良く、いちいち細かなモデルの違いを検討しなくても良いことだ。そして、公理に反する例を見つけることで、モデルを絞りこむことが可能である。公理を用いた研究は、行動経済学の大きな特徴の一つである。
2010/02/14
Definition of Risk: Expected Utility or mean variance
リスクは2通りの定義が可能
1.効用関数:限界効用の低減や増加として表現される
2.平均分散モデル:U = V + b*Var V:期待値、Var:分散、b>0 リスク選好、b<0リスク嫌悪
*平均分散モデルは、期待効用理論の近似である。結果が既知の確率分布から現れるので、平均と分散で効用関数を近似的に表現することが可能である。
1.効用関数:限界効用の低減や増加として表現される
2.平均分散モデル:U = V + b*Var V:期待値、Var:分散、b>0 リスク選好、b<0リスク嫌悪
*平均分散モデルは、期待効用理論の近似である。結果が既知の確率分布から現れるので、平均と分散で効用関数を近似的に表現することが可能である。
2010/02/06
社会のシステムは誰が決めるの?変えるの?
神経科学の若手研究者コミュニティーから「これからの科学・技術研究についての提言」(こちら)という内容で、パブリックコメントが出ました。(要約はここ)
このページの読者は少ないと思いますが、こちらで取り上げておきます。
個人的な意見です。
研究社会に限らず日本の社会システムは非効率的な部分が多いです。別に効率が上がらなくてももっと大きな富を社会が生み出せるようになれば、労働時間も減るし、休暇も増えるし言うことないんでしょうが。話が横にそれましたが、日本の社会の特徴として階層性・勤勉さは重要な要素ですが、良い面と悪い面の両者を兼ね備えています。
年功序列の社会システムは、尊敬の念を重んじる一方で、古い非効率なシステムが多く残ることに繋がっていると思います(年長者の意見が社会のルール、国の方向性を決定するので)。景気が良い時はそれでうまく廻っていたと思いますが、悪い今は効率性を上げないと食いっぱぐれる人が沢山でますよね。ちなみに、どの国でも非効率だよ~って意見は無しということで。
勤勉さは日本人の良いところですが、リスク管理などでは非効率な部分を生んでいると思います。失敗ゼロを追求することを良しとし多大な努力を注ぐ。また、失敗が起きることを許容できず、過度に悲観的・懲罰的になりすぎる。景気の悪い最近は、この点がより目立っていると思います。もちろん、死に繋がるような失敗は議論の範囲外ですが。
この提言は、そんな日本人の特徴をうまく捉え、研究社会の抱えるシステムとしての問題点を直しましょうという、シンプルで生産的な提案だと思います。ただし、提言の内容は正論なので、正論で世の中が動かないことを知っている人にとっては、机上の空論だというとらえ方もあるでしょう。そりゃ、若手だって簡単に世の中の仕組みが変わらないことぐらいわかってると思いますが、何もしなければ始まりません。やり方については賛否両論あると思いますが、これを契機に何かが変わっていくと良いと思います。
このページの読者は少ないと思いますが、こちらで取り上げておきます。
個人的な意見です。
研究社会に限らず日本の社会システムは非効率的な部分が多いです。別に効率が上がらなくてももっと大きな富を社会が生み出せるようになれば、労働時間も減るし、休暇も増えるし言うことないんでしょうが。話が横にそれましたが、日本の社会の特徴として階層性・勤勉さは重要な要素ですが、良い面と悪い面の両者を兼ね備えています。
年功序列の社会システムは、尊敬の念を重んじる一方で、古い非効率なシステムが多く残ることに繋がっていると思います(年長者の意見が社会のルール、国の方向性を決定するので)。景気が良い時はそれでうまく廻っていたと思いますが、悪い今は効率性を上げないと食いっぱぐれる人が沢山でますよね。ちなみに、どの国でも非効率だよ~って意見は無しということで。
勤勉さは日本人の良いところですが、リスク管理などでは非効率な部分を生んでいると思います。失敗ゼロを追求することを良しとし多大な努力を注ぐ。また、失敗が起きることを許容できず、過度に悲観的・懲罰的になりすぎる。景気の悪い最近は、この点がより目立っていると思います。もちろん、死に繋がるような失敗は議論の範囲外ですが。
この提言は、そんな日本人の特徴をうまく捉え、研究社会の抱えるシステムとしての問題点を直しましょうという、シンプルで生産的な提案だと思います。ただし、提言の内容は正論なので、正論で世の中が動かないことを知っている人にとっては、机上の空論だというとらえ方もあるでしょう。そりゃ、若手だって簡単に世の中の仕組みが変わらないことぐらいわかってると思いますが、何もしなければ始まりません。やり方については賛否両論あると思いますが、これを契機に何かが変わっていくと良いと思います。
2010/01/31
数学の脳科学における有効性
今日、ボスと議論した話題
人の意志決定について脳の情報処理を理解する上で、計算理論に基づく研究は有効だけど、研究は必ず規範となる理論(Normative theory)からスタートすべき。理由は、
1.観察した現象を説明する計算理論は沢山あり、2.そのサブクラスも含めれば無数に可能。3、そのモデルが正しいと証明することは現実的に可能でない。
従って、規範となっている計算理論から出発して、そのサブモデルを議論していくことが重要だという思想。逆にいえば、何か適当なモデルから出発して、その周辺でサブモデルを議論しても、局所最適解を探していることになる。最も悪いのは、自分がなんとなく好きなモデルに後付けで色々付加して(ad hoc)、こんなによく現象を説明できるようになりましたよっていう研究だ。
ここで、生物学的要因が果たす制約条件は、あくまでも補足的なものと考えるのが良いという考え。制約を増やすことでモデルは絞り込まれるが、モデルの全ての仮定を生物学的要因で証明することはかなり難しい。
強化学習のTDモデルの成功を例にあげれば、
TDはモンテカルロ法という優れた規範理論に極めて近い計算過程であり、生理学の研究によりドーパミン細胞の発火頻度がその性質を備えていることが多数の研究により示されている。
経済学を例に挙げれば、
モデルは必ず効用理論からスタートしている。期待効用理論もプロスペクト理論も効用理論がもとになっている。
脳は計算回路なので、工学の得意な計算手順(algorithm)を備え持つモデルが重要。ミクロ経済学では計算を回路、手順として考えることはない。逆に不必要な要素を増やしたアルゴリズムは、その現象に対する説明力は上がっても規範から大きく外れてジャンクになってしまう。
脳研究がもっと進んで脳の計算基盤が明らかになればモデルはずっと絞り込まれるが、現段階ではその手法は意志決定の研究には望みが低い。ならば、やはり、シンプルで良くその計算の重要性が理解されている計算原理から始めるべきなのだろうか。
人の意志決定について脳の情報処理を理解する上で、計算理論に基づく研究は有効だけど、研究は必ず規範となる理論(Normative theory)からスタートすべき。理由は、
1.観察した現象を説明する計算理論は沢山あり、2.そのサブクラスも含めれば無数に可能。3、そのモデルが正しいと証明することは現実的に可能でない。
従って、規範となっている計算理論から出発して、そのサブモデルを議論していくことが重要だという思想。逆にいえば、何か適当なモデルから出発して、その周辺でサブモデルを議論しても、局所最適解を探していることになる。最も悪いのは、自分がなんとなく好きなモデルに後付けで色々付加して(ad hoc)、こんなによく現象を説明できるようになりましたよっていう研究だ。
ここで、生物学的要因が果たす制約条件は、あくまでも補足的なものと考えるのが良いという考え。制約を増やすことでモデルは絞り込まれるが、モデルの全ての仮定を生物学的要因で証明することはかなり難しい。
強化学習のTDモデルの成功を例にあげれば、
TDはモンテカルロ法という優れた規範理論に極めて近い計算過程であり、生理学の研究によりドーパミン細胞の発火頻度がその性質を備えていることが多数の研究により示されている。
経済学を例に挙げれば、
モデルは必ず効用理論からスタートしている。期待効用理論もプロスペクト理論も効用理論がもとになっている。
脳は計算回路なので、工学の得意な計算手順(algorithm)を備え持つモデルが重要。ミクロ経済学では計算を回路、手順として考えることはない。逆に不必要な要素を増やしたアルゴリズムは、その現象に対する説明力は上がっても規範から大きく外れてジャンクになってしまう。
脳研究がもっと進んで脳の計算基盤が明らかになればモデルはずっと絞り込まれるが、現段階ではその手法は意志決定の研究には望みが低い。ならば、やはり、シンプルで良くその計算の重要性が理解されている計算原理から始めるべきなのだろうか。
【Book】Neuroeconomics第二章:実験経済学と神経経済学
この章の言いたいところは明確に理解できていない。理由は、実験経済学のことを私がほとんど知らないからだろう。
基本的な著者の立場は、脳活動の知見が実験経済学の理解にどう役立つのかを説明するもの。
それには、以下の3つの基準が重要とのこと
1.Internal Order:個人の選好と脳が選好を生み出す数理モデル
2.Social Order:個人間(他者との関わり)のもとでの意志決定
3.Market Order:集団
それぞれのレベルで意志決定に関わる脳内の計算過程がどう役立つのかを例を挙げて提言している。マーケットレベルになるとほんとにどう役立つんだろうな?
基本的な著者の立場は、脳活動の知見が実験経済学の理解にどう役立つのかを説明するもの。
それには、以下の3つの基準が重要とのこと
1.Internal Order:個人の選好と脳が選好を生み出す数理モデル
2.Social Order:個人間(他者との関わり)のもとでの意志決定
3.Market Order:集団
それぞれのレベルで意志決定に関わる脳内の計算過程がどう役立つのかを例を挙げて提言している。マーケットレベルになるとほんとにどう役立つんだろうな?
2010/01/24
【Book】Neuroeconomics第一章:Introduction
Neuroeconomics(ピンク本)を読んだまとめ
第一章:神経経済学はどのようにして生まれたか?
認知神経科学と実験経済学・行動経済学の出会い
神経経済学のこれから
研究の流れ
・神経科学:1990年代のPerceptual Decisionの研究を皮切りに、意志決定に関する研究が盛んとなる。脳の損傷患者の知見や破壊実験などにより、心理状態と脳機能の関係が議論された。2000年に入ると、特に研究数は格段に増えた
・経済学:公理を用いた規範理論は単純で強力であった。理論と実際の行動のズレをパラドクスとして問題化して修正される理論は、明快な理論と消費者の行動の鋭い予測を生み出す。
融合の動機
・神経科学:研究の規範となる普遍的理論がなかった。経済学はうってつけ。
・行動経済学:心理学の原理を取り込んでモデルを改変してきた流れから、更に神経生物学の知見を取り込むことで新たな予測モデルを生みす方向性へと向かった。
両者が歩み寄った契機
非侵襲脳活動測定器(特にfMRI)が90年代に発達したことで、人間を対象に脳活動の測定が可能になった。
脳科学の知見が、ヒトの意志決定の予測の新たな規範理論となりうるのかはわからない。脳の計算アルゴリズムを神経生物学の知識に基づいて理解できた時、初めてそういえるのかもしれない。反対派は多いが新しい挑戦をしなければ何も生まれない。歴史に残る研究なんてほんのわずかだし、それが科学として正しい方向なのかどうかは何十年も経た後に明らかになることだと思う。まあ勃興期で玉石混淆なので、研究の質を見分ける目がなければならない。また、成熟した学問はいつも間違いが少なく心地よいのも確かだが。
第一章:神経経済学はどのようにして生まれたか?
認知神経科学と実験経済学・行動経済学の出会い
神経経済学のこれから
研究の流れ
・神経科学:1990年代のPerceptual Decisionの研究を皮切りに、意志決定に関する研究が盛んとなる。脳の損傷患者の知見や破壊実験などにより、心理状態と脳機能の関係が議論された。2000年に入ると、特に研究数は格段に増えた
・経済学:公理を用いた規範理論は単純で強力であった。理論と実際の行動のズレをパラドクスとして問題化して修正される理論は、明快な理論と消費者の行動の鋭い予測を生み出す。
融合の動機
・神経科学:研究の規範となる普遍的理論がなかった。経済学はうってつけ。
・行動経済学:心理学の原理を取り込んでモデルを改変してきた流れから、更に神経生物学の知見を取り込むことで新たな予測モデルを生みす方向性へと向かった。
両者が歩み寄った契機
非侵襲脳活動測定器(特にfMRI)が90年代に発達したことで、人間を対象に脳活動の測定が可能になった。
脳科学の知見が、ヒトの意志決定の予測の新たな規範理論となりうるのかはわからない。脳の計算アルゴリズムを神経生物学の知識に基づいて理解できた時、初めてそういえるのかもしれない。反対派は多いが新しい挑戦をしなければ何も生まれない。歴史に残る研究なんてほんのわずかだし、それが科学として正しい方向なのかどうかは何十年も経た後に明らかになることだと思う。まあ勃興期で玉石混淆なので、研究の質を見分ける目がなければならない。また、成熟した学問はいつも間違いが少なく心地よいのも確かだが。
2010/01/22
Decision Making under uncertainty
結果が不確実(Uncertainty)な状況の意志決定には、以下の2つの状況がある
1.Risk
2.Ambiguity
人間はRiskとAmbiguityのどちらも嫌うことが知られている。
Risk
行動選択の結果が確率的な状況。例えば、宝くじ、パチンコなどを思い浮かべてもらえるとよい。
最も重要な点:結果の確率分布は既知である。ただし、結果がでるまでその結果はわからない。
(宝くじの裏面を見ると発売何万本中、1等a本、2等b本、、、というように、全ての出現確率が記載されている。)
Ambiguity
選択行動の結果起こる事象の確率が不明な状況。Unknown probability
Ellsberg paradoxはexpected utility theoryの公理を破る例として知られており、ambiguity aversionの証拠として良く取り上げられる。
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最近の論文ではこちら。Glimcher labから。リスクとアンビギュイティーのレベルを操作したクジを用意し、クジの価値と相関する脳活動を示す領域を調べると、線条体(Striatum)と内側前頭前野(Medial prefrontal cortex)がどちらのクジの価値も表現しているとのこと。
1.Risk
2.Ambiguity
人間はRiskとAmbiguityのどちらも嫌うことが知られている。
Risk
行動選択の結果が確率的な状況。例えば、宝くじ、パチンコなどを思い浮かべてもらえるとよい。
最も重要な点:結果の確率分布は既知である。ただし、結果がでるまでその結果はわからない。
(宝くじの裏面を見ると発売何万本中、1等a本、2等b本、、、というように、全ての出現確率が記載されている。)
Ambiguity
選択行動の結果起こる事象の確率が不明な状況。Unknown probability
Ellsberg paradoxはexpected utility theoryの公理を破る例として知られており、ambiguity aversionの証拠として良く取り上げられる。
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最近の論文ではこちら。Glimcher labから。リスクとアンビギュイティーのレベルを操作したクジを用意し、クジの価値と相関する脳活動を示す領域を調べると、線条体(Striatum)と内側前頭前野(Medial prefrontal cortex)がどちらのクジの価値も表現しているとのこと。
2010/01/11
拡大解釈の危うさ
科学、とくに人間を対象とした実験は、社会に与える影響が大きいことを十分認識しておく必要があります。特に神経科学では、測定機器の原理の理解が浅い、実験デザインの未熟さなどの理由で、学術論文上において結果の意義について拡大解釈がおこります。わかっていないことが多い発達段階の学問であることもその理由かもしれません。
拡大解釈を通り越して俗説となるとさらに大変。例えば、人は脳の本来の能力の10%しか使っていないとか。神経科学学会から注意が喚起されたそうです(オリジナルはこちら)。そういえば、北斗神拳では30%だったなぁ。ケンシロウは残り70%を使えるらしい。
日本のバラエティー番組とかで神経科学を扱ったものには、俗説が多いのは事実だと思います。科学成果の記事であっても、実験結果が拡大解釈されて記事になったりしてる時もあるし。科学者なら発信する科学情報の厳密さには、特段の注意が必要だなぁ。わからないことはわからないと言えることもまた重要。以前、そんなことを書いていた。。。まあ、他の研究者を惹きつける魅力的な仮説を提案する重要性は言うまでもなく、拡大解釈との境界を明確にしつつ、社会一般の人が興味を持てるかたちで情報を発信する能力は養わないとなぁ。
拡大解釈を通り越して俗説となるとさらに大変。例えば、人は脳の本来の能力の10%しか使っていないとか。神経科学学会から注意が喚起されたそうです(オリジナルはこちら)。そういえば、北斗神拳では30%だったなぁ。ケンシロウは残り70%を使えるらしい。
日本のバラエティー番組とかで神経科学を扱ったものには、俗説が多いのは事実だと思います。科学成果の記事であっても、実験結果が拡大解釈されて記事になったりしてる時もあるし。科学者なら発信する科学情報の厳密さには、特段の注意が必要だなぁ。わからないことはわからないと言えることもまた重要。以前、そんなことを書いていた。。。まあ、他の研究者を惹きつける魅力的な仮説を提案する重要性は言うまでもなく、拡大解釈との境界を明確にしつつ、社会一般の人が興味を持てるかたちで情報を発信する能力は養わないとなぁ。
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