説明

 ニューロサイエンス学位プログラムHP
 募集要項:博士前期過程
      博士後期課程

・神経経済学シンポジウム:リンク

自己紹介

自分の写真
動物やヒトを対象に神経経済学の研究を行っています。神経経済学には神経科学,経済学,心理学の知識を用います。興味のある方は、h-yamada_at_md.tsukuba.ac.jp へご連絡下さい。筑波大学です。博士前期・後期課程の研究指導担当教員となっています。twitter: @Hiroshi12337131

卒業生

卒業生:田尻涼(2014, 医療科学類)、今泉優理(2018, 医療科学類)久保木亮介(博士論文指導(神経科学)2022、現武田薬品工業)

2009/12/09

BDM(Becker–DeGroot–Marschak) bet と WTP(willingness to pay)

財の価値を推定する最も典型的な方法として、BDMオークションが知られている。
簡単に言うと、その商品にいくら払っても良いのかを自己申告してもらう。

その際の手順は、
1.0~10ドルの間でDVDを値踏みしてもらい(価格と商品は一例)
2.コンピューターがランダムに価格を選ぶ。
3.消費者が指定した価格よりも高い値を付けていれば、商品を自分の指定した値段で購入できる。低い価格を付けていれば、お金を払う必要は無いが、商品を購入することもできない。

つまり、10ドル(最大値)と値踏みすれば、確実に購入でき、5ドル(中央値)であれば50%の確率で購入できる。つまり、どれだけその商品にお金を払っても良いか(willingness to pay)を測定している。


-----------------------------------------------------------
この手法は、最近の神経経済学の実験でよく使われている。
WTPは商品だけではなく、色んな物に応用できる。例えば、電気ショックを回避するのに何ドル払いますか?という形で、電気ショックの価格を測定することも可能である。

最近の論文では、こちら
カルテクのAntonioがWTPを財毎(宝くじ、食べ物、小物)に測定し、全てのWTPと相関して活動する、Common Valueを表現する脳部位を探したら、vmPFCでしたよ。という話、ただし、実験上の問題点がある。
1.解析の仕方:3つの財全てに賦活した脳部位を探すためにconjunction analysisをするのだが、実際に示された図は、(FDR corrected)を用いていない、uncorrected P<0.001の図
2.データの解釈:全ての財に対して共通の価値を表現しているなら、財の種類に関わらずWTPに依存して活動が変化する必要があるが、実際のデータでは宝くじの条件で最も活動が低い
3.2の解析は、Peak voxelのみの活動を用いている
4.WTPが真の価値からどの程度ずれるのか?多分、結構なノイズになるだろう。

従って、特に2の結果からこれは、財に関わらない共通の価値(筆者らは、common decision variableとして説明。ここでは意訳している)が表現されているのではなく、3つの財全てに対して価値を表現した脳部位(+財毎に感度が違う)と理解するのが最も適当ではなかろうか?

お金(Currency)って何よ?というのが根本的な問いなんだろうが。

2009/11/29

顕示選好:弱公理(WARP)と強公理(SARP)

顕示選好の弱公理(Weak Axiom of Revealed Preference)
:2つの財ベクトル XとY の選好を直接測定した時

 X>Y ならば Y>Xであることはあり得ない

 *直接顕示選好された財のみについて取り扱う弱い仮定

顕示選好の強公理(Strong Axiom of Revealed Preference)

:間接的な顕示選好に対しても同様に、違反(Violation)が起きないと仮定する

 X>Y かつ Y>Z ならば、 X<Zであることはあり得ない

 *間接的な顕示選好も含んで最適な行動を説明しようとするので、より強い仮定を持つ


顕示選好の手法を用いて全ての財ベクトルに対して選好を記述すると(A>B,B>C,C>D...G>Hと連鎖を作る。中にはB>C,C>DだけどD>Bといったようにループができる)AはHよりも直接的にor間接的に顕示選好されているということができるが、上記の仮定を犯した回数(ループの数)を数えることで、消費者の合理性の度合いを測定することができる。もし、完全な選好を持つなら、ループの数は0個となる

2009/11/16

顕示選好:revealed preference

顕示選好:個人の選択行動から観察された選好
個人の選好を知るためには財を比較することが必要。財XとYを比べて消費者がXを”選んだ”ならば

X > Y であることが直接示されたことになる(directly revealed preferred)

更に、X > Y, Y > Zが選択から示されれば、推移律(transitivity)の仮定から、X > Z が間接的に示される(indirectly revealed preferred)

-------------------
ミクロ経済学において、消費者の選好は必ず”選択”によって測定される(補足:BDMなどの手法もある)。一方、実験心理学においては、選択ではなく”Rating”によって点数を付けることで選好を測定している。分野が違えば測定方法が異なること、そのデータの背後にある神経メカニズムは異なることは、常に意識すべき問題だ

2009/11/14

事業仕分け

政府が赤字である以上、事業仕分けによって支出を減らすのは仕方ない。しかし、問題なのは事業仕分けに当てられた事業が全体の極一部であるということだ。今後更に事業仕分けを進め、全ての事業について同様に総点検するというなら、赤字を減らすという点で強い期待が持てる。しかし、今回で事業仕分けはほとんどおしまいっていうんだったら、人気取りのためのショーに一部の分野が犠牲になっただけっていう悲しい結末を想像してしまう(最後の一文)
それだったら、いっそのこと全ての省庁で何パーセント削減ってする方が、単純明快で良いと思うのは私だけ?もちろん、乱暴なやり方なのは承知だが赤字を減らす効果は絶大だと思う。


その一方で、事業仕分けを見ていると、どうすれば人々が幸せに生活できるのかを考えさせられる。

競争が激しくなって、また、短期雇用が終了していつ生活できなくなるかってなことを日々考えさせられていたら、誰も幸せには感じないよね。上の方で、高い給料もらってパワーゲームの末に敗れたとしたって、十分蓄えがあるから不幸にはならないんだろうけど。

赤字続きの政府を立て直すためには、財政を切り詰めるのは最もなことだろうけれども、その後の幸せな絵が見られなければ、どんどん追い込まれていくだけだよね。費用対効果で評価が難しいけれども、国力に深く関係し生活を豊かにする領域(例えば、教育、科学)の評価基準と将来像は、誰が?どうやって?描くのだろう。経済学者?

人々の生活の安定と幸福に繋がるような脳科学研究っていうものを、実現できるんだろうか?幸福を科学的に研究するって意味で。主観的な幸福を脳科学で定量化するっていみで。
幸福の科学とか中脳を刺激するとかじゃなくて。。。。

2009/11/09

メモ:コブ-ダグラス型効用関数

凸型の単調無差別曲線
v(x1,x2) = x1^a * x2^1-a

指数の合計が常に1。

2009/10/27

選択

選択は、予算集合と選好理論を用いて記述することができる。つまり、
 消費者は、”予算の範囲内で最も選好する商品(財)の組み合わせを選ぶ”

テクニカルには、予算線と接した無差別曲線上の点が、選ばれる。

--------------------------
強化学習と比較して考えると、強化学習ではソフトマックス(シグモイド関数)を用いて、価値の低い選択肢を選ぶ行動の割合を状況に応じて調節するが(環境の変動を考慮しているため、探索行動が必要になる)、ミクロ経済学では、嗜好は一定だとされており(端的に言えば、学習は考えない)、常に価値の最も高い商品の組み合わせを選ぶ。ランダム効用理論を用いれば、強化学習と同様に低い価値の財を選ぶ行動も説明される。

では、いったい脳の中でどのように選択が実現されているのか?これは、最も難しい問題の一つだと思われる。何故かというと、選択に関与する単一の責任脳部位は今のところなさそうだし、選択の計算メカニズムが、強化学習や経済学で仮定するような単純なものかといえば、そうとも思えない。そもそも、選択の過程を観察可能なのだろうか?シグモイド関数のような神経相関が見つかれば、それは選択なのだろうか?また、現状の神経科学の知見から考えると、選択に関与する脳の回路は複数あると考えるのが妥当なんではなかろうか?

膨大な情報処理の結果として起こる単一のOutput(選択行動)を、どうやって説明するのがもっとも妥当なんだろうか?知識の不足のせいかわからない。

2009/10/10

神経科学における数学の重要性

神経回路としての計算原理が明らかとは言えない現状で、脳機能を調べるにあたって数学(計算論的アプローチ)が重要である理由は、数学を用いることで他の研究との比較が容易になり、結果を一般化しやすいことが上げられると思う。

ある変量の効果を調べるには、その変量を操作した群を最低2つ作れば仮説が検証できる。したがって、必ずしも数式で結果を説明する必要はない。しかし、脳科学においては、その他の様々な要因が脳活動に影響するので、実験デザインを変更すると結果が変わるのことが多い。すると、結局その結果はケーススタディーでしかなくなってしまう。

一方、脳活動を数式から求められる連続値で説明すると、交絡因子の発見も容易となるし、数学なんで、複数の研究間の結果の比較が容易になる。ただし、数学を用いるにあたっての問題点は、

・複数のモデル間の比較を行う場合、どれが真のモデルかを決定するのは方法はあるが困難
・どんなモデルでも構築可能だが、明確な理論を背景とした数理モデルでなければ受け入れられない

っていうところだろうか。

2009/10/06

限界効用(Marginal Utility)

限界効用とはある効用関数 U= u(x1,x2)において、x1が一単位(Δx1)増えた場合に得られるUの増加量(ΔU)を意味する。この際、x2の値は固定されており、財x1を微分したものが財x1の限界効用に当たる。

もう少しかみ砕いた説明を試みると

最も単純な2財モデルU= u(a;リンゴ,b;バナナ)を考える。
ある個人にとってリンゴ一個とバナナ3本が同じ価値であり(完全代替材とする)、予算(m)の範囲で最も自分が満足できる財:リンゴとバナナの組み合わせを購入する。

効用関数 は 1*a + 3*b = m

効用とは人がある財を消費した時に得られる満足度で、新たにリンゴ一個を得て得られる満足度は、
ΔU/Δa となる。

-------------------------------
最近JNSに掲載された論文で、限界効用を時間割引の手法で調べた論文が掲載されている。
Encoding of marginal utility across time in the human brain.
Pine A, Seymour B, Roiser JP, Bossaerts P, Friston KJ, Curran HV, Dolan RJ.
J Neurosci. 2009 Jul 29;29(30):9575-81.

残念ながら、私にはこれが限界効用を測定しているのかどうか、イマイチ良くわからない。わかる方がいれば是非教えてください。

2009/09/26

姿勢

研究は、これまでわかってなかったことを、”こんなスゴイことが新たにわかりましたよ。面白いでしょ!!!”って言うのが仕事です。論文書く時も、とにかくこんなおもろいことが、きれいさっぱりわかりました~って論文は、一般的に評価が高いですよね。

でも、その研究に付随するわかっていないことって沢山あって、特に現象を扱う実験系の研究分野では、決定論的に結果が得られないことが多い。でも、説明する時にそんなマイナス点をいろいろ補足していくと、聞いてる人は何が何だかって感じになるんで、ザックリとそんな問題は切り捨てるわけですね。許される範囲で。
自分が発表する場合も、当然いろいろな問題を切り捨てて、なるたけ分かり易くするわけなんですが、昔から、そのやり方に違和感を感じるんですよね。今分かってることって問題の入り口だけど、もう、きれいさっぱり問題解決しました~(設定した問題の範囲内で)って言うのが。

これは、やり方が自分に合っていないってことなんだろうな。わからんことはわからん。問題は問題。まだ、実現不可能。って姿勢を取る方が自分に向いているのかも。夢はいつか現実に。
hard problemに挑戦するほど、表面的なやり方できれいごとを言うのが心苦しく思う時があったりします。いつも正面から問題と向き合ってるつもりではありますが。

2009/09/21

代替材と補完財

代替材(substitute):値段が上がると他の安い商品を買うようになる物
 万年筆とボールペン、ソーセージと魚肉ソーセージ、国産牛肉と輸入牛肉

補完財(complement):同時に消費されるもの
 紅茶と砂糖、ハンバーグとケチャップ、パンとバター、紙とインク、鉛筆と消しゴム、シャンプーとリンス

*** 神経科学の視点 ***
代替材は同様のカテゴリーに分類される商品なので、カテゴリーに従って商品の価値が脳の中に表現されそう。眼窩前頭皮質がその第一候補?
一方、補完財は財と財の組み合わせに応じて、補完財になるかどうかが決まるので、関係が重要になる。そうなると、組み合わせの数がどどっと増えるので、どんな情報処理が適しているんだろう。。。

2009/09/14

消費者理論:公理

ミクロ経済学で扱われる選好に関する仮定(公理)は以下の三つ ・完全性(Completeness);消費者は、財1:(x1,x2)と財2:(y1,y2)を比較可能である  例えば、ロシアンルーレットを用いて、成功したらお金が貰えるけど失敗したら死ぬみたいな選択肢はこの仮定の範囲外。例:(20%の確率で死ぬ, 100万円獲得)と(50%の確率で死ぬ, 1000万円獲得)。 ・反射性(Reflexivity);財1(x1,x2)は財1(x1,x2)と同程度に好ましい  同じ商品どうしを比較したらいつもそれは等価である。例外としては、幼児とか痴呆症のお年寄りなどは、この仮定を満たさないかも。 ・推移律(transitivity);財1(x1,x2)≧財2(y1,y2)で財2(x1,x2)≧財3(z1,z2)なら、財1(x1,x2)≧財3(z1,z2)。 *AをBと同等かそれ以上に好むことを”A≧B”と表す  この仮定は、時々破られる。例えば、100個の財を1~100まで全ての組み合わせで全部比較していったら、この仮定は守られないだろう。また、例えば、牛丼≧カレーの人が、前日に牛丼を食べていたら、次の日はカレー≧牛丼と変わるだろう。 人の消費行動において、推移律は必ず満たさなければならない必然的な性質かは明確で無い。 推移律が破られる生理的条件が明らかとなれば、仮定が補完されるのかも。。。 神経科学における意志決定の研究では、この3条件は満たされているのが常だなぁ

後日談(2021年に加筆・・・):この内容を実際にサルで調べたところ、お腹が空いているほど推移律がよく守られることがわかりました。当たり前と言えば、当たり前だけど、以外と気づかない盲点です。
https://www.nature.com/articles/s41598-017-02417-5

2009/09/03

神経経済学はどこへ向かうの?

近年、fMRIを用いることにより人間の脳活動(正確には血流量の変化)が観察できるようになり、人間の消費行動の脳内メカニズムの研究が盛んになった。経済学的視点に基づいて行われる神経科学を神経経済学(Neuroeconomics)と呼び、新たな学際的領域として研究がスタートしている(神経経済学の定義はいろいろあると思うが、例えばVikipediaは:http://en.wikipedia.org/wiki/Neuroeconomics)

経済学で古くから知られているリスクや不確実な結果を避ける(Ambiguity Aversion)等、様々な人間の経済学的活動に関する特徴に関する脳機能が、次から次へと調べられている。技術的な問題があることは横に置き、研究がもっと進んでいったら、いったいどのような未来につながるのだろうか?

現在、応用として始められているのは、賛否両論あるもののニューロマーケティングがすぐに思い浮かぶ。じゃあ、経済学に基づいた社会の制度設計が神経経済学の発展に伴って変更されるなんてこともあるんだろうか?話は飛ぶけど、例えば金融。外貨預金をする時にシティーバンクで必要なリスク許容度の評価があるけど、評価基準が変わったりするんだろうか?そもそも、リスク許容度って、損失が膨らんだ状態になって初めてわかるもんだし、事前に聞いたって真の値は得られないよね。ブラックマンデーとかサブプライムローンとか、予測したり予防できるようになったりするんだろうか?神経経済学によって?

現在、神経経済学は基本的に個人を対象にするものであるので(個人の脳活動の大きさと行動の相関とか、グループレベルの解析では15人くらい)、すぐに制度設計に直結するものでもないと思うけど、神経科学の知見が集積されることで経済理論の修正につながるような大きな発見があれば、それは制度の改変につながるのだろう。全然話は違うけど、薬物依存症だってその脳神経基盤とその悪性がわかってきたからこそ、その規制がしやすいって面はあると思うし。
そもそも、現行の社会制度だって人間の特性を検討して作られているんだと思うけど(制度設計の基本については何もしりませんが)、神経科学としての裏付けが明確に得られれば、制度変更の有効性を断然議論しやすくなると思う。またまた脱線するけど、例えば日本の研究費の審査・分配制度なんて批判にあふれていて、でもその割に簡単に変わるとは到底思えない。そもそも制度設計って誰がやってるものなんだろうか?政治家?官僚?

ミクロ経済学を勉強し始めた神経科学者としては、将来どんなことになるのかとても楽しみです。でも、勉強不足で疑問だらけ。経済学者で神経科学に興味のある方の意見を伺ってみたいです。

2009/09/02

効用(utility):主観的な価値

次のどちらのくじを選ぶか?
  1.50%の確率で当たる4000円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる500円
1ですね~~ クジの期待値(金額×確率)は2000円>500円ですし。

では次のくじは?
  1.50%の確率で当たる1000円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる500円
くじの期待値はともに500円だが、多くの人は2を選ぶ。

  1.50%の確率で当たる100万円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる50万円
このクジならほとんどの人が2を選ぶのではないでしょうか?


二つのくじの価値が等しくなる安全なクジの金額を考えてみると、
 100%×A円 = 50%×1000千円 
 100%×B万円 = 50%×100万円 
A:490円くらい?、B:45万円くらい?
両辺を2倍して見ると、
980円 = 1000円、90万円 = 100万円と

千円は僕個人にとって980円の主観的な価値しかないんです。100万円は90万円???(だだし、確率は客観的であると仮定されている)


金額が高くなるほどに主観的な価値が目減りすることを説明する数式のうち、最も簡単なものはべき関数です(Bernoulli utility function)。
宝くじの価値は、EU = p*u(x) と定義されます。
;p:probability ,u(x)= x^α(指数関数)  x:お金, α:-1 to 1
(確率pは客観的な値であると仮定されています)

経済学では単純な仮定数少ない仮定(公理)を設定し、公理に矛盾する現象(Paradox)を見つけてモデルを改善します。この問題は、18世紀の数学者Daniel BernoulliによってSt. Petersburg paradoxとして指摘され、上記のように限界効用逓減の法則として解決した。厳密に言うと、今回の宝くじの例は、効用理論をlotteryに拡張したものと位置づけるのが正しいです。


お金の主観的な価値は、日頃どの程度のお金を扱っているのかに依存して個人個人で違いそうですね。ちなみにギャンブラーの人は、αが1以上のことが多いとか。本当?

---------------------
なぜ、神経科学の研究において効用理論が重要かというと、効用とは被験者の”主観的な価値”を測定したものに外ならないからです。客観的な価値(objective value)とは、お金;xと確率;pの積になりますが、人間が主観的に感じている価値(Subjective Value)は客観的な価値からずれるので、人間の消費行動を生み出す脳を理解するには、行動から主観的な価値を推定することが必要になるわけです。
効用理論では、確率Pは客観的であると扱われていますが、プロスペクト理論でProbability weighting(主観的な確率)が導入されています。

2009/08/31

選好と無差別曲線(Indifference curve)

無差別曲線とは、財(x1,x2)を組み合わせた場合に、消費者にとって等しい好ましさとなる組み合わせの集合が表す曲線のことを指す。

最も単純な2財モデル(x1;リンゴ,x2;バナナ)を考える。
自分が今、リンゴ5個とバナナ10本を持っているとし、リンゴ1個とバナナ2本が同じ価値を持つ場合を考える(リンゴとバナナの好みは人それぞれだが)

リンゴ1個とバナナ2本が同じ価値なので(完全代替材:一定の固定比率で代替できる財)、(x1,x2) = (5,10) は (4, 12)と同程度に好ましい。

つまり、2(x1) + x2 = 20 を満たす全てのx1とx2の組み合わせは価値が等しいことになる。式を変形して、
x2 = 20 - 2(x1) としてプロットすると、無差別曲線(完全代替材の場合には直線)が現れる。

-------------------------------
ここで、神経科学の話に急に飛ぶと、
The representation of economic value in the orbitofrontal cortex is invariant for changes of menu.2008, Padoa-Schioppa C, Assad JA.
Neurons in the orbitofrontal cortex encode economic value.2006, Padoa-Schioppa C, Assad JA.
の仕事の重要性は、複数の種類のジュース(財)を用いて選好を定量化しているところにあるわけです。ミクロ経済学の基本を踏まえてサルに選択行動を行わせて、各ジュースの選好を測る実験デザインはとても良くできているなぁと関心します。

2009/08/22

ゴールとやる気

研究のゴールの一つは、研究成果を論文として発表することにある。
研究成果が出始めると、より良い成果を求め、もう少し、もう少しと検証を繰り返し、ゴールが先延ばしになっていくことが良くある。

ゴールの先延ばしはやる気の低下をまねくので、頻繁なor大きなゴールの変更は上手に行わなければならないと思う。特に、自分が人の研究を統括している場合には、より慎重なゴールの変更が必要になると思う。

この問題は、研究に限ったことではなく、全ての仕事に当てはまると思う。
変更したゴールが、価値の高い物であること、そのゴールまでの明確な道筋を示さなければ、ゴールの変更は納得しがたいものとなり、部下のやる気は大きく損なわれ、変更前よりも悪い状況に陥ることも大いにあり得るだろう。俺についてこい、みたいなやり方ではだめなんだろうな。たとえ、論理的に正しいゴールの変更なのだとしても。

2009/08/19

無題

今日は全くやる気が出ないので、取りあえずブログを始めてみた。
日頃から文章を書く習慣が無いので、多少何かの足しになるかと思って始めることにした。考えるのは好きなのだけれど、教科書を読んだり文章を書いたりするのはだいたい長続きしない。小説とかマンガはおもろいのになぁ。
今後は多少神経科学についても、話題にしていこうかと思ったり。
Locations of visitors to this page