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 ニューロサイエンス学位プログラムHP
 募集要項:博士前期過程
      博士後期課程

・神経経済学シンポジウム:リンク

自己紹介

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動物やヒトを対象に神経経済学の研究を行っています。神経経済学には神経科学,経済学,心理学の知識を用います。興味のある方は、h-yamada_at_md.tsukuba.ac.jp へご連絡下さい。筑波大学です。博士前期・後期課程の研究指導担当教員となっています。twitter: @Hiroshi12337131

卒業生

卒業生:田尻涼(2014, 医療科学類)、今泉優理(2018, 医療科学類)久保木亮介(博士論文指導(神経科学)2022、現武田薬品工業)

2009/09/26

姿勢

研究は、これまでわかってなかったことを、”こんなスゴイことが新たにわかりましたよ。面白いでしょ!!!”って言うのが仕事です。論文書く時も、とにかくこんなおもろいことが、きれいさっぱりわかりました~って論文は、一般的に評価が高いですよね。

でも、その研究に付随するわかっていないことって沢山あって、特に現象を扱う実験系の研究分野では、決定論的に結果が得られないことが多い。でも、説明する時にそんなマイナス点をいろいろ補足していくと、聞いてる人は何が何だかって感じになるんで、ザックリとそんな問題は切り捨てるわけですね。許される範囲で。
自分が発表する場合も、当然いろいろな問題を切り捨てて、なるたけ分かり易くするわけなんですが、昔から、そのやり方に違和感を感じるんですよね。今分かってることって問題の入り口だけど、もう、きれいさっぱり問題解決しました~(設定した問題の範囲内で)って言うのが。

これは、やり方が自分に合っていないってことなんだろうな。わからんことはわからん。問題は問題。まだ、実現不可能。って姿勢を取る方が自分に向いているのかも。夢はいつか現実に。
hard problemに挑戦するほど、表面的なやり方できれいごとを言うのが心苦しく思う時があったりします。いつも正面から問題と向き合ってるつもりではありますが。

2009/09/21

代替材と補完財

代替材(substitute):値段が上がると他の安い商品を買うようになる物
 万年筆とボールペン、ソーセージと魚肉ソーセージ、国産牛肉と輸入牛肉

補完財(complement):同時に消費されるもの
 紅茶と砂糖、ハンバーグとケチャップ、パンとバター、紙とインク、鉛筆と消しゴム、シャンプーとリンス

*** 神経科学の視点 ***
代替材は同様のカテゴリーに分類される商品なので、カテゴリーに従って商品の価値が脳の中に表現されそう。眼窩前頭皮質がその第一候補?
一方、補完財は財と財の組み合わせに応じて、補完財になるかどうかが決まるので、関係が重要になる。そうなると、組み合わせの数がどどっと増えるので、どんな情報処理が適しているんだろう。。。

2009/09/14

消費者理論:公理

ミクロ経済学で扱われる選好に関する仮定(公理)は以下の三つ ・完全性(Completeness);消費者は、財1:(x1,x2)と財2:(y1,y2)を比較可能である  例えば、ロシアンルーレットを用いて、成功したらお金が貰えるけど失敗したら死ぬみたいな選択肢はこの仮定の範囲外。例:(20%の確率で死ぬ, 100万円獲得)と(50%の確率で死ぬ, 1000万円獲得)。 ・反射性(Reflexivity);財1(x1,x2)は財1(x1,x2)と同程度に好ましい  同じ商品どうしを比較したらいつもそれは等価である。例外としては、幼児とか痴呆症のお年寄りなどは、この仮定を満たさないかも。 ・推移律(transitivity);財1(x1,x2)≧財2(y1,y2)で財2(x1,x2)≧財3(z1,z2)なら、財1(x1,x2)≧財3(z1,z2)。 *AをBと同等かそれ以上に好むことを”A≧B”と表す  この仮定は、時々破られる。例えば、100個の財を1~100まで全ての組み合わせで全部比較していったら、この仮定は守られないだろう。また、例えば、牛丼≧カレーの人が、前日に牛丼を食べていたら、次の日はカレー≧牛丼と変わるだろう。 人の消費行動において、推移律は必ず満たさなければならない必然的な性質かは明確で無い。 推移律が破られる生理的条件が明らかとなれば、仮定が補完されるのかも。。。 神経科学における意志決定の研究では、この3条件は満たされているのが常だなぁ

後日談(2021年に加筆・・・):この内容を実際にサルで調べたところ、お腹が空いているほど推移律がよく守られることがわかりました。当たり前と言えば、当たり前だけど、以外と気づかない盲点です。
https://www.nature.com/articles/s41598-017-02417-5

2009/09/03

神経経済学はどこへ向かうの?

近年、fMRIを用いることにより人間の脳活動(正確には血流量の変化)が観察できるようになり、人間の消費行動の脳内メカニズムの研究が盛んになった。経済学的視点に基づいて行われる神経科学を神経経済学(Neuroeconomics)と呼び、新たな学際的領域として研究がスタートしている(神経経済学の定義はいろいろあると思うが、例えばVikipediaは:http://en.wikipedia.org/wiki/Neuroeconomics)

経済学で古くから知られているリスクや不確実な結果を避ける(Ambiguity Aversion)等、様々な人間の経済学的活動に関する特徴に関する脳機能が、次から次へと調べられている。技術的な問題があることは横に置き、研究がもっと進んでいったら、いったいどのような未来につながるのだろうか?

現在、応用として始められているのは、賛否両論あるもののニューロマーケティングがすぐに思い浮かぶ。じゃあ、経済学に基づいた社会の制度設計が神経経済学の発展に伴って変更されるなんてこともあるんだろうか?話は飛ぶけど、例えば金融。外貨預金をする時にシティーバンクで必要なリスク許容度の評価があるけど、評価基準が変わったりするんだろうか?そもそも、リスク許容度って、損失が膨らんだ状態になって初めてわかるもんだし、事前に聞いたって真の値は得られないよね。ブラックマンデーとかサブプライムローンとか、予測したり予防できるようになったりするんだろうか?神経経済学によって?

現在、神経経済学は基本的に個人を対象にするものであるので(個人の脳活動の大きさと行動の相関とか、グループレベルの解析では15人くらい)、すぐに制度設計に直結するものでもないと思うけど、神経科学の知見が集積されることで経済理論の修正につながるような大きな発見があれば、それは制度の改変につながるのだろう。全然話は違うけど、薬物依存症だってその脳神経基盤とその悪性がわかってきたからこそ、その規制がしやすいって面はあると思うし。
そもそも、現行の社会制度だって人間の特性を検討して作られているんだと思うけど(制度設計の基本については何もしりませんが)、神経科学としての裏付けが明確に得られれば、制度変更の有効性を断然議論しやすくなると思う。またまた脱線するけど、例えば日本の研究費の審査・分配制度なんて批判にあふれていて、でもその割に簡単に変わるとは到底思えない。そもそも制度設計って誰がやってるものなんだろうか?政治家?官僚?

ミクロ経済学を勉強し始めた神経科学者としては、将来どんなことになるのかとても楽しみです。でも、勉強不足で疑問だらけ。経済学者で神経科学に興味のある方の意見を伺ってみたいです。

2009/09/02

効用(utility):主観的な価値

次のどちらのくじを選ぶか?
  1.50%の確率で当たる4000円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる500円
1ですね~~ クジの期待値(金額×確率)は2000円>500円ですし。

では次のくじは?
  1.50%の確率で当たる1000円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる500円
くじの期待値はともに500円だが、多くの人は2を選ぶ。

  1.50%の確率で当たる100万円(外れは0円)。
  2.100%の確率で当たる50万円
このクジならほとんどの人が2を選ぶのではないでしょうか?


二つのくじの価値が等しくなる安全なクジの金額を考えてみると、
 100%×A円 = 50%×1000千円 
 100%×B万円 = 50%×100万円 
A:490円くらい?、B:45万円くらい?
両辺を2倍して見ると、
980円 = 1000円、90万円 = 100万円と

千円は僕個人にとって980円の主観的な価値しかないんです。100万円は90万円???(だだし、確率は客観的であると仮定されている)


金額が高くなるほどに主観的な価値が目減りすることを説明する数式のうち、最も簡単なものはべき関数です(Bernoulli utility function)。
宝くじの価値は、EU = p*u(x) と定義されます。
;p:probability ,u(x)= x^α(指数関数)  x:お金, α:-1 to 1
(確率pは客観的な値であると仮定されています)

経済学では単純な仮定数少ない仮定(公理)を設定し、公理に矛盾する現象(Paradox)を見つけてモデルを改善します。この問題は、18世紀の数学者Daniel BernoulliによってSt. Petersburg paradoxとして指摘され、上記のように限界効用逓減の法則として解決した。厳密に言うと、今回の宝くじの例は、効用理論をlotteryに拡張したものと位置づけるのが正しいです。


お金の主観的な価値は、日頃どの程度のお金を扱っているのかに依存して個人個人で違いそうですね。ちなみにギャンブラーの人は、αが1以上のことが多いとか。本当?

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なぜ、神経科学の研究において効用理論が重要かというと、効用とは被験者の”主観的な価値”を測定したものに外ならないからです。客観的な価値(objective value)とは、お金;xと確率;pの積になりますが、人間が主観的に感じている価値(Subjective Value)は客観的な価値からずれるので、人間の消費行動を生み出す脳を理解するには、行動から主観的な価値を推定することが必要になるわけです。
効用理論では、確率Pは客観的であると扱われていますが、プロスペクト理論でProbability weighting(主観的な確率)が導入されています。
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